身上保護(監護)について思う。

最近、身上保護(監護)¹に関係する調整ですっきりしないことがあったので、書き留めて整理することとする。それは、被後見人を入所させてもらう流れとなっていた施設のインテークワーカー²から初めての電話があり、そのなかで、私のことについて「身上監護を行わない方針というか、信条で対応されているということですね。」と言いきられたことにある。いつもであれば、施設の相談員から身上監護とのワードを聞いただけで嬉しく(知っている!と)なるのだが、ゆっくり話せない場面で、携帯電話で丁寧に否定することもできないまま、後日入所は受け入れ難しいとケアマネージャーに連絡があり、御縁はそこで終わってしまった。(最終的には、別の安心できるところに入所できたので、ケアマネージャーには心から感謝です。)

内容は、施設で発生する色々な状況において、「受診は毎回連れて行ってもらうことでよいでしょうか。」との問い合わせである。私はうかつにも、正直に「施設の機能も伺いながら、必要性を判断して対応させてもらいます。」と答えたのである。

後見人の知識が少しでもある施設は、リソースの視点をもち、後見人を施設の機能を補完するものとして、サービス計画を作ろうとしてくれる。私も介護計画等に、存在やサービス内容を記載して頂くことはを周囲に推奨し、関わりの具体化を行っているが、この際大事な点は、後見人は実際の身体機能を補完する援助者ではなく、判断を支援(代行)する者という基本の部分である。

私は、状況が見えない施設生活者のアセスメントのため、または、自閉傾向が強い言葉数が少ない方のニーズを掘り当てることなどを目的に、買い物や釣り、写真療法などで一緒に外出し、そこで垣間見られた価値観をもとに日々の対話の個別性を高める視点を設けたり、進路について検討していく方法をとったりしている。それは、施設で退屈している本人を、介助して、気分転換させてあげるという考えではなく、アセスメントの行為なのである。

後見制度に関心をもっている施設の相談員でも、事実行為という概念は知らないことが多い。後見制度は、上記のように直接何かをしてあげるため後見人が動くことは事実行為といい、契約などの判断をすることについて法律行為という。後見人の行うべき業務はこの法律行為であり、事実行為は行わないとされている。事実行為は、それを生業としているヘルパーなど適切なかたに後見人が依頼する(契約)立場となる。

しかしながら、身上監護を後見の業務の中心においている社会福祉士であって、感情を丁寧に扱いたいという方針で行動している私としては、事実行為は必要と判断すれば、ばんばん行っているし、本人すら知らなかった感情や考えを掘り当てるような関わりは、後見人という近い存在であるからこそと、その部分にやりがいをもっている。この関わりが、外出をさせてくれる人=後見人は事実行為をするものというかんたんな勘違いを生む可能性があることも理解している。

何を行うにも、理由と根拠を周囲に理解してもらう取り組みは欠かせないということに尽きると思うので、少なくとも周りにいるケアマネージャー等支援者には、しっかり説明をして行きたいと思っている。

自己決定支援の考えが後見の領域でもここ数年で高まってきており、判断ができる内容や場面等アセスメントをすることが、さらに重要となって来ている。介護が昔あまりアセスメントせずに、行われていたことも思い出すが、過剰な支援の提供による権利侵害を無くそうとの考えは、その人の生い立ちや価値基準を知らずに実務をしている人が語ってしまうとしたら画餅となりえる。

法律行為は、その行為に至るまでの準備として後見人の事実行為も必要とするし、その準備においても、その人の価値基準等を知る関わりがなくして、行えないのである。

施設の人材不足や、リスクマネジメントから本来業務からはみ出た部分は家族にとの考えは十分に理解できる。そして、後見人は家族の代りという視点も理解はできる。しかし、本来の機能をうやむやにして安易な介護の分担とならない、自己決定のための関係者のスキルの成熟が今後さらに課題になると言える。

すくなくとも、事実行為がよく分かり、事実行為が=身上保護ではないという知識だけは、明確に伝える必要があると感じている。

また、対応が面倒ではない被後見人等を担当したいとの社会福祉士がいるとの噂が、アンテナの高くない私の耳にも届いてしまっている。これは、本稿で取り上げた内容をすべて、屁理屈と落としめ、何より社会福祉士の資格価値が疑われる発言だと思うので、同じ資格の仲間として、専門性を保って欲しいと願うばかりである。

注釈

1)後見人の業務には、財産の管理と身の回りのことについて取り決めて、生活を動かしていく身上保護(監護)がある。直接の介護等世話をすることではない。

2)入所を案内したり、判断する中心となる施設の相談員

 

 

 

遠足とノンバーバルな視点

心身障害児・者施設の遠足に、後見人として参加させて頂いた。今回で4回目となる。コミュニケーションがほぼ難しい本人との行動は、本人を良く知る為、ケアスタッフと共通的な視点を持つためには重要なことと思っている。サイドに大型リフトがついている大型観光バスに乗ることは、私自身もとてもテンションが上がるし、自然の散策、いちご狩りと毎回企画も楽しい。年に1,2回の貴重な本人の外出機会に、しっかり向き合っているとの印象をとても感じている。

遠足前に、本人を迎えに居室に行ったが、部屋に入った瞬間に本人と目が合い、「こんにちわ!」と挨拶すると、「うー!」と大きな声を出された。調子は変わりなく元気だなとの表面的な行動の確認という意味合いが強く、私自身あまり意識しないやりとりだった。ただ、タイミングが良かったのだと。

しかし、それを見ていた同室者のお母さんは違ったようで、「いつもは無表情で、元気がなく、声も出さないのに、反応し、表情もぱっと変わった。やっぱり、自分の身内は分かるんだ。このお子さんは大人しくて…(たくさんお話頂く・省略)。」

日頃から意識的な面接を行うことと同じくらい、ノンバーバルな視点は持つようにと自分でも心がけていることだが、この場面で感じたことは、ノンバーバルは好き・嫌い、イエス・ノーの自己決定の道具的なコミュニケーションの視点を超えるものであるということだ。障害をもったお子さんに、毎日のように施設に訪れ、長いスパンで愛情のまなざしを注いで来た母親の視点は、すべてを受け入れ、すべてを包み込むものであるし、良いことをたくさん探そうとの視点、それを共有しようとする姿勢に溢れていると感じている。

受け取ったノンバーバルな表出は、正解が分かりにくいものである。しかし、そんなことはどうでもよく、本人をしっかりみつめて、よそ見をしないで対応して欲しいとの親の気持ち、その子らしさを小さな変化からでも感じ取って欲しいとの親の願いが根底にあり、高齢となった親がその価値観の一片を後見人に分けてくれたものと受け止めている。

なかなか訓練の場が乏しいノンバーバルな視点は、今回、周囲の意味づけ、語り直しなどで支援の力を強めたり、方向性を与え、その意識のあり方が、話ができない本人にも、良いものとして伝わっていくということを実体験することができた。これは、親であれば当たり前の関わりかもしれない。しかし、支援者としては、ものすごく意識しないとできないことでもあると再認識した。

遠足前に色々な想いを巡らせることとなったが、遠足ではバスの中の楽しいレクや現地の屋内施設では、保育士さん、看護師さんが2人で抱えて滑り台を体験させるなど、想いがつまったスケジュールが用意されていて、親の信頼が無いと難しいと現実的な思いもあったが、驚きと笑いにただただ私もとりこまれた1日となった。

想いを口に出してみる事、まずはやってみることという基本的な行動についても考える日となった。

スーパービジョンの評価と問診票

認定社会福祉士制度上のスーパービジョン(SV)では、今くらいの頃は、1年の評価を行うバイジーが訪れます。年6回のSVと事前面談、そして今回の評価の面談と実際には8回バイジーとお会いするわけですが、認定に提出する一連の書類が一年分整ったとの安堵感と一年やり通したとの達成感が言葉には無くても伝わって来ます。

この評価は、1号様式というソーシャルワーカーとしての実践でやれていること、やれていないことのスケーリングとその具体的状況を記載するシートの変化を見ていくものですが、当初は訳が分からないとの1号様式でも、毎回のSVの中でどこを扱ったのか確認する作業により、評価時にはなじみのシートになっているという状況です。そのため、事後評価は書けている様子があり、スケーリングのレベルが下がったとしても、なぜ下がったかの説明をうまく書いて頂くなど、自分のためのシートとして使える方が増えたとの印象です。

わたしは、様式を丁寧に使い、そこになぜそうなのかとの考えや思いも入れてもらうことにしています。それによりジレンマやなぜやれていないのかのカギが共有できるとの視点を持ち、SVで扱っています。併せて、バイジーがしっかりできるようになればすぐにバイザーに成れるとの考えを持ち、バイジーにはのちのちにバイザーに成るように関わって、同様の視点ももってもらえるように対話しています。

規定の様式の他に、わたしはスーパービジョン問診票というシートをつかっています。これは、SVがバイザーのものであったり、バイジーにとって有益ではない内容となることを予防するため、なにより、ほかで語ることが無い専門職としての想いを丁寧に扱うために設けています。シートはなりたいSW像や嫌なSW像といった当初の想いを記述してもらう項目と、業務外での不安など背景を捉える項目、今日の疲労度や今日のSVの満足度というスケーリングとなぜがとの詳細欄から成ります。

当初は、書きなれない内容に戸惑われる様子もありますが、想いのままに書かれ、その開示された内容について深い想いを共有します。SWは機械でも道具でもありません。その個人の価値観とSWとしての価値観を併せ持つことでの悩みや支障を抱えて実践しています。SVはカウンセリングではありませんが、1号による柱を維持しながら、行動の源となる想いを取り上げなければ、有益なSVにはならないとの実感をもっています。

問診票に書かれた、SVの満足度とその理由など、バイザーへの通信簿を丁寧に拝見しながら、これからも続いていくSVに向かっていきたいと思っています。

認定社会福祉士スーパーバイザー登録更新

早いもので、東京で社会人学生として学びながら認定社会福祉士を取得し、その翌年から手探りで開始したスーパーバイザーも有効期間が満了し、登録更新となった。スーパービジョンをスーパービジョン論としてみた場合には、それはまさに実学と言え、技術と知識を活用する専門職の生きるための総合力を問うものである。実際のSVでは、クライエントの存在をいつも傍らに置き、いかに良質な支援を行うか、そうなるための姿勢とはどんなものか、専門職として生きる個人としての感情や背景への対処はどうあるべきかなど、社会福祉士が社会福祉士であり続けるための問いを協働で行っている。「時間が無いから」、「学びより実践あるのみ」とSVをさける人がいる。初年度のSVは手順を飲みこむために、またバイザーとの関係を意識しすぎるなど夢中であることが多いと思われるが、その段階を超えると、本当に自分のためにある特別な時間の意義を深く実感でき、共に決めた目標を達成するためにどのように時間を進めて行くか、視界が徐々に開けていく感覚を味わうことができると思う。またSVを行うことにより苦手で自分には関係ないと多くのひとが考えがちのSW理論の実用もさまざま取り組めている。ぜひとも、最初は首をかしげながらでもSVに足を踏み入れ、資格のアイデンティティとはどんなことかなど、そこでしかできない対話を味わって欲しいと思う。

スーパービジョン講師(東京社会福祉士会)

本日は、基礎研修Ⅲの講師で東京に伺いました。担当コマは、スーパービジョンです。認定社会福祉士制度開始から、手探りで行って来たスーパービジョンについて、私なりの手法、視点についてお話しました。東京社会福祉士会のスーパーバイザー養成システムの構築に参加させて頂き、講師となってから3年となります。バイジーの視点がしっかり持てれば、バイザーもできる。認定SVは戻るところを様式で担保し、具体的に成長部分を2人で見つけ取り扱っていく。忙しい中で、そこでしか話せない専門職としての研鑽の場の必要性、効果を多くの人と共有できればとの想いで研修外でも活動しています。

スーパービジョン単体での効果について因果関係を証明することはなかなか難しいですが、良い対話、良い拘束を2人でもてた時、SV後の自己効力感、目標に向かってのパースが広がり実務に向かう力、視点の変化を実感できると私自身の体験では言い切ることができます。

東京ではバイジー希望者に対して、バイザーは圧倒的に少ない状況のなか、確実にSVが行え、満足度や専門職のレジリエンス等心理的アプローチについても配慮できるバイザーが確実に育成されて来ている思います。事務局によるフィッティング制度も重要な部分で機能していると感じています。

人の行動(心理)が扱え、理論を実務に自然に取り込んで評価まで行えるように私のSVでは注力しています。一方でSVを受けてよかったと思われる、健康心理的、産業カウンセリング的視点、専門職の一致についても取り扱っております。

東京の会員の熱量を仙台に持ち帰り、さらに効果的なSVをバイジーと検討していきたいと考えています。

SV希望されるかたはお気軽にメールをください。認定社会福祉士を目指さないかたでもお受けしています。

 

院内研修会講師

12月20日総合病院において、「起こりやすい虐待と院内における視点」というテーマで研修を行いました。特殊な病棟もあり日ごろから権利擁護や倫理についての意識が高い病院だけに、どのようなことを伝えるか思案しましたが、本人とその家族を中心とした生活者の視点についての意識をおき、基本となる虐待対応についてお伝えしました。家族療法的なアプローチ法、危機介入アプローチ、バイオサイコソーシャルなど、事例と理論の紹介を並行的に行い、制度論的な視点にあわせて個別的支援の実際を紹介しました。

病院は虐待が発生する場としてはほぼ想定されていませんが、研鑽をつんで、地域での対応に協力していくことは望まれています。地域で機能するためには組織をソリューション視点で意識統合しておく必要があります。精神科病棟のある病院ではまたすこし視座は変わると思いますが、院内にある倫理委員会等との接続や体制化、実際の対応時のフローづくりなど、新たに設置する虐待防止委員会の機能を構築するようなコンサルテーションも行えます。在宅中心の事例でしたが、多職種だからこそ難しいチームでの虐待への関わりかた、つなぎ直しによる本人の回復など、病院に置き換えたり、病院がどのように協力できるか皆さんで考えて行って頂ければと思っております。お呼び頂きありがとうございました。

事業所内研修会

複合的なサービスを展開している事業所で権利擁護についての研修会を開催しました。

日勤業務終了後の研修にもかかわらず、多数のかたが参加され、アットホームな一方で緊張感ももって研修することができました。多職種向けの研修で、初めて権利擁護を学ぶというかたも多くいらっしゃったとのことで、伝えたいことはたくさんお伝えしましたが、周辺領域の例など逆に解りにくくさせたのではと、理解度について反省もありました。

受けていただいたかたには、研修後の補足資料の提示や問い合わせへのお返事等継続的なフォローにも尽力したいと思います。

事業所の方針やレベルに合わせた研修会を企画していきますので、お気軽にご連絡を頂ければと思っております。

おつかれさまでした。

社会福祉士のアイデンティティ

現在、数名のかたへ認定社会福祉士制度上のスーパービジョンを受け持たせて頂いているのですが、対話のなかで意外な共通項が垣間見られています。

それは、職場の役割としての業務と社会福祉士資格のスキルの不一致という考えです。業務が定型化が進みすぎている、上長が福祉職でなく話がしにくいなど環境は様々ですが、目の前にある仕事を黙々とこなすことが自分の役割と考えるようにしているようです。

この状況が認定社会福祉士の広がりや、職能団体の組織率につながっているのではないでしょうか。

認定社会福祉士取得者の役割として、普及啓発の一端をになっているわけですが、私としましては、SVのなかで丁寧に専門職のアイデンティティや理論等の実践活用の促進など、不一致の解消に注力しております。

社会福祉士会等職能団体未加入の方もSVを実施しておりますので、興味のあるかたはご連絡下さい。

認定社会福祉士制度上のスーパービジョン行っています。

認定社会福祉士を目指している方、業務上の評価や根拠の確認等を一人では行えないとしているを方中心にスーパービジョンを行っております。

希望になるべく沿った時間に設定するなど、忙しいバイジーの状況に配慮しております。

東京社会福祉士会のスーパーバイザー養成研修に講師として参加したノウハウ、スーパーバイザーフォローアップ研修参加など、知識の刷新に心がけております。

まずはスーパービジョンに慣れるところから始めましょう。

ご希望のかたは、お問合せからどうぞお願いいたします。